スーツのインナーとして作られ、スーツスタイルだけでなくジャケパンスタイルもおしゃれにドレスアップしてくれるスーツベスト。薄手の生地で作られたものが多く、季節を問わず着用することができる利便性の高いアイテムだ。
そこで今回は、意外に知られていないスーツベストの着こなしやおすすめブランドを、基本的な選び方とともに紹介していく。
スーツベストとは?チョッキやジレとの違いは?
まずはじめに、「ベスト」「チョッキ」「ジレ」といったイメージの近いアイテムの違いから紹介する。それぞれの違いは語源からきている。
ベスト(Vest)とは
ベスト(Vest)は「袖なしの服」という意味を表す「英語」。インナー・アウターのどちらの意味でも使用できるが、アウターとしての意味合いが色濃く残っている。そのため、背面の生地にも気を配り、装飾にも手抜きがない。
また、本来、単体のベストは「オッドベスト」と呼ばれている。
ジレ(gilet)とは
ジレ(gilet)は「袖なしの服」という意味を表す「フランス語」。インナーとしての意味合いが強い。そのため、他人に見られることがない背面へのこだわりは少ない点が「ベスト」との大きな違い。
チョッキとは
チョッキは「袖なしの服」という意味を表す「日本語」。漢字では「直着」と書く。ベストとほぼ同じ意味合いとなっている。
そのため現在では、チョッキよりもベストという表現を使う人の方が多い。
使い分けは必要?
近年のビジネススタイルのカジュアル化にともない、インナーとしての意味合いが強かった「ジレ」も、カジュアルなアウターとして着用されることが多くなってきている。
そのため国内では、ベストとジレの区別が難しくなってきている。中には「ジレベスト」と表現して販売するショップもある。
よって日本国内では明確に使い分ける必要はあまりなく、目的のアイテムを探すときは背面の装飾に気を遣いながら選ぶことをおすすめする。
また「ジレ」としての役割が明確なアイテムを探したい時には、フランスで設立されたブランドをメインに探す方がよい。
スーツベスト(ジレ)の選び方
ここでは、基本的なスーツベストの選び方を紹介していく。基本を押さえておくことで、慣れとともにセンスよく幅を広げた着こなしができるようになる。
ジャストサイズを選ぶ
スーツベスト(ジレ)は、ジャストサイズを選ぶことが重要だ。サイズが大きくルーズなものや、小さくキツキツなものはスーツスタイルのフォーマルな印象を損ねてしまう。
丈の目安はベルトが隠れる程度がよい。長すぎてもルーズな印象になるため、選ぶ際は気をつけてほしい。
Vゾーンが広いベスト(ジレ)を選ぶ
スーツベスト(ジレ)には、ボタンが縦1列になっている「シングルデザイン」と、ボタンが縦2列になっている「ダブルデザイン」の2タイプがある。
シングルデザインの中でも、5つボタンのタイプはVゾーンが広く6つボタンのタイプは狭い。ダブルデザインでは、4つボタンタイプはVゾーンが広く8つボタンタイプは狭い。
Vゾーンが狭いと、シャツの色やネクタイのデザインから全体の印象を作ることが難しく、上級者の着こなしが必要になる。
デザイン的にもシングルデザインの方がシンプルなため、全体的にスタイリッシュに見えやすく着こなしやすい。
そのためスーツベスト(ジレ)に慣れていない人は、最もオーソドックスなシングル5つボタンタイプから選ぶことをおすすめする。
クラシカルなスタイルには襟付きを
また、もともとスーツベスト(ジレ)には襟がついていたと言われている。
襟付きのスーツベストは「ラペルド」とも呼ばれ、ブリティッシュスタイルのスーツのベストに用いられることが多い。
襟の種類も色々あるが、スーツの定番のノッチドラペルカラー、ショールをかけたようなショールカラー(ヘチマ襟)、襟先が尖ったピークドラペルカラーが一般的。
昨今のトレンドでもあるクラシカルなブリティッシュテイストに着こなしたい時には、エレガントな襟付きがおすすめといえる。
スーツに合わせてカラーと素材を選ぶ
ベストはスーツのインナーとして着用するため、スーツに合わせて選ぶことが基本だ。まず、スーツベストに慣れていない人は「ネイビー」か「グレー」のカラーを選ぶことをおすすめする。
スーツスタイルの定番はネイビー・グレー・ブラックの3色。ネイビーやグレーのベストを同色で合わせることもでき、グレーのベストは全3色との相性もよいため着こなしやすい。
使い勝手の良さも含め、最初はできる限りネイビーかグレーを中心に選ぶことをおすすめする。
また、着用しているスーツ素材と異なる素材のスーツベストを合わせることは難しいため、はじめは同じ素材のベストを選ぶ方がよい。スーツ素材をしっかりと確認してから選ぶことが大切だ。
スリーピーススーツを選ぶ
スーツベストに慣れていない人へのおすすめがスリーピーススーツだ。スリーピーススーツとは、ジャケット・パンツ・ベストがセットになっているスーツセットのこと。スーツの原点とも言われている。
スリーピーススーツを選ぶことで、カラーや素材が違うなどの着こなしの失敗を防ぐことができる。
スーツベスト(ジレ)おすすめの着方は?
ここからは、スーツベストを取り入れたおすすめの着こなしを紹介していく。
スリーピーススーツ
まず、スーツベスト初心者におすすめのスリーピーススーツによる着こなしを紹介する。スリーピーススーツは、ジャケットのボタンは全て外し、ベストは一番下のボタンのみを外しておくことが基本的な着こなしとなっている。
定番のネイビーによる着こなし
スーツスタイルの定番色ネイビーによるスリーピースのスーツスタイル。ビジネスシーンに左右されることなく着こなすことができるため、1セット持っておけば安心できる。
ネイビーは基本的に、シングルボタンでもダブルボタンでも違和感なく着こなすことができる。また、シャツの色を変えたり、パンツをスラックスタイプにすると印象も変わる。
通常丈の場合は、足元をプレーントゥやストレートチップなどのシンプルな革靴にし、スラックスのように丈がやや短めのパンツを履く際はローファーがおすすめ。
グレーストライプ
定番のグレーにストライプの入ったスリーピースのスーツスタイル。やや明るめのコーデだが、ベストを着用することで大人の印象にまとめることができる。
グレーは様々なカラーとの相性がよいため、シャツやネクタイのトーンを変えることでシックにまとめることもできる。その日の気分やビジネスシーンに応じて印象を変えることができる優秀なセットだ。
チェック柄のスーツスタイル
カジュアルになりすぎることもあり、コーディネートが難しいチェック柄スーツも、ベストを組み合わせることでドレス感のあるおしゃれな着こなしになる。このように、自身のスーツスタイルコーデの幅を広げたい人に、スリーピーススーツはおすすめだ。
オッドベストスタイル
次に、スーツベストによる着こなしが慣れている人におすすめの、オッドベストスタイルを紹介する。オッドベストスタイルとは、スーツと同じカラーや素材で作られていないベストを組み合わせたスタイルのこと。
こちらも、ベストは一番下のボタンのみを外しておくことが基本的な着こなしとなっている。
ネイビースーツ × グレーベスト
定番のネイビースーツに、「スーツベストの選び方」で先述したおすすめカラーである、グレーのベストを合わせた着こなし。
グレーベストは、真面目で固い印象になりがちなネイビースーツを、清潔で落ち着いた印象にまとめてくれる。
ブラウンスーツ × グレーベスト
こちらもグレーベストを取り入れた着こなし。ブラウンスーツという応用的なスタイルに、違和感なくグレーベストが合わせられている。
このようにグレーベストは、定番にも応用にも合わせることができ、1着持っておくだけで様々な着こなしに対応できる使い勝手の良いアイテムだ。
グレースーツ × ネイビーベスト
こちらは、カラーと素材の異なるスーツとベストを組み合わせた上級者の着こなし。スーツベストの着こなしに慣れてきくると、このように季節に合わせて様々なカラーと素材を組み合わせ、着こなしの幅を広げていくことができる。
厳選!スーツベストおすすめブランド
ここからは、スーツベストのおすすめブランドを紹介していく。
LARDINI(ラルディーニ)
1978年のイタリア・アンコーナにてルイージ・ラルディーニ氏が創業。家族経営による仕立て工房の設立以来、30年近くに渡り世界の有名ブランドのOEMを請け負っている。グッチ、バーバリー、ドルチェ&ガッバーナなど、世界の名だたるブランドが顧客に名をつらねる。
そんなラルディーニが1993年にオリジナルブランドとして「LARDINI」を立ち上げた。発表されたメンズウェアコレクションは、ディテール・デザインともに評判高く、一躍有名ブランドに成長した。
ラルデーニは、1ハンドメイドによる丁寧な作りと、上質な生地からなる存在感が特徴的なブランド。生地は、世界的にも有名な生地ブランドであるエルメネジルド・ゼニアやロロ・ピアーナなどから採用している。
全製造工程がイタリアンメイドの上質なブランドとして、是非とも押さえておきたい。
TAGLIATORE(タリアトーレ)
1960年代創業のレラリオ社を母体とし、1998年に二代目のピーノ・レラリオ氏によって立ち上げられたイタリアンテーラーのブランド。TAGLIATORE(タリアトーレ)はイタリア語で、「裁断士」を意味している。
高いカッティング技術による、ウエスト部分を大胆に絞った独特なフォルムのジャケットなど、独自の路線をひた走るブランドだ。
タリアトーレが展開するジャケットやジレは世界的に評価が高く、クラシックでありながらもセクシーさを表現できることから最先端のデザインとも言われている。
タリアトーレは生地だけでなく、ボタンなどの付属品にまでこだわりが行き届いていることで有名。日本では日本人の体型に合わせたデザインにリファインして展開されているため、上質な1着を手に入れることができるおすすめのブランドだ。
TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)
株式会社ワールドが展開するブランドで、1984年にデザイナーの菊池武夫氏が設立した。
英国風のトラディショナルが特徴的で、「色気と遊び心があり、今の時代をさりげなく着こなす男性のためのTOKYO発信ブランド」というコンセプトのもと展開されている。
比較的手に入れやすい価格で上質なスーツベストを購入することができるため、幅広い年代から人気がある。また、美しい艶感に加え、撥水やシワになりづらいなど機能性も高い。ラインナップも豊富なため、スーツベスト初心者の人におすすめのブランドだ。