海外ブランドの革靴が人気を誇っていた1990年代、日本の革靴メーカーは大きな試練を迎え、多くの工場が倒産や廃業に追い込まれた。
しかし、この試練を期に日本の革靴メーカーは各自のブランドを見直し、華麗なる再興を遂げた。海外の良い文化を取り入れつつ、日本人の足にフィットする革靴作りが多くの日本人に支持されたのだ。
今回は、そんな日本の革靴業界で今最もオススメのブランドを紹介していく。
リーガル(REGAL)
学生から社会人まで、幅広い世代が履いている「ローファー」が有名なリーガルだが、ウイングチップやサドルシューズなど、ラインナップは非常に充実している。
リーガルは、1902年(明治35年)創業の株式会社リーガルコーポレーションが展開するブランドだ。1913年にアメリカで誕生したリーガルブランドを、日本人向けに改良を加えた上で国内販売している。
今では北米以外のリーガルブランド使用権を取得し、全体の約8〜9割を日本で製造している。つまりリーガルは、アメリカントラディショナルを正統に引継いだ国産ブランドだと言うことができる。
この積み重ねてきたトラディショナルの歴史から誕生した多くのロングセラーモデルを軸に、現代のデザインを加えたコレクションを展開している。
使うほどに足に馴染み、傷がつきにくいアイテムを2万円前後から手にすることができるため、20代前半の若者から幅広い年齢層まで支持されている。
品質が良い上に使い勝手も良いリーガルは、一足は持っておきたいブランドと言える。
大塚製靴
大塚製靴は、皇室御用達の革靴ブランドとして名高いブランドだ。国産革靴ブランドの代名詞といっても過言ではない。
大塚製靴は、1872年(明治5年)に当時14歳だった大塚岩次郎氏が、東京新橋で小さな靴メーカーを創業したのが始まり。当時から「日本人のための靴を」という理念のもと、技術研鑽に明け暮れた結果、1892年(明治25年)の万国博覧会で金牌を受賞し、世界中にその名を轟かせた。
1922年に機械製靴に着手し、2001年には靴業界初となるISO9001:2000品質マネジメントシステムに認定されるなど、新しいことに挑戦する姿勢は今もなお失われてはいない。
早くても1年半待ちの人気ラインナップの中でもひときわ輝きを放つ大塚製靴のコードバン。
革一枚あたりの面積が小さい希少なコードバンを、継ぎ目の少ない一枚革でデザインする贅沢さが特徴的だ。素材だけでなく、だし縫いのピッチも3cmの中に12針と非常に細かい縫い目を実現している。この細かさは、グッドイヤーウェルト製法によって作られた英国著名の靴ですら再現が難しい。希少な素材を使用するだけでく、熟練職人の技術を駆使して作られる美しいフォルムが、予約殺到という結果を生み出している。
手入れをするたびに品格と風格が増す大塚製靴の革靴は、是非とも押さえておきたい国産ブランドだ。
ユニオンインペリアル(Union Imperial)
ユニオンインペリアル(Union Imperial)
「世界に誇る靴づくり」を目指して設立されたユニオン社(現 世界長ユニオン)は、早くからイタリアの靴づくりに注目し、積極的に新技術や新素材の導入に力を注いだ。その成果として「Union Imperial」が生まれ、1972、73、74年にイタリアで開催された国際芸術皮革製品コンテストで日本初のオスカー賞を受賞するまでにいたった。
またその高い技術力は、クリスチャンディオールやシャルルジョルダンなどの世界的なハイブランドとの技術提携をも成功させてきたことでも有名だ。
ユニオンインペリアルは、ユニオン社が「インペリアル = 最高峰」という称号を与えたブランド。オスカー賞を受賞したブランドが、2008年にリバイバルされて販売されたことで大きな注目を集めた。
ユニオンインペリアルは、製法や使用素材などの違いから3つのシリーズに分けられる。
高い技術と長い製造期間を必要とする「ハンドソーン・ウェルテッド製法」を用い、フランスの世界的なタンナーのひとつ「アノネイ社製」の革を採用した『プレミアム』。
同じく「ハンドソーン・ウェルテッド製法」を用い、エルメスの傘下でフランスの「デュプイ社製」の革を多く採用した「プレステージ」。
伝統的な「グッドイヤー・ウェルテッド製法」用い、フランスの世界的なタンナーのひとつ「アノネイ社製」の革を採用した『グッドイヤー・ウェルテッド』。
各シリーズでは製法や素材だけでなくデザインや履き心地も異なるため、自身の用途に合わせて選ぶことが肝心。
世界に誇れるエレガントさを放つユニオンインペリアルは、今後も大注目の国産ブランドだ。
レンド(RENDO)
RENDOは、東京の浅草にアトリエ兼ショップを構えるシューズブランド。吉見鉄平氏によって2013年に立ち上げられた。 ブランド名の由来は「連動」という単語からきている。その名の通り、RENDOブランドは「全行程の連動」から生み出される。
デザインやパターン作りに始まり、木型は浅草の木型屋と組んでオリジナルを製作する。生産は吉見鉄平氏が修行時代に勤務し、信頼できる職人が集う「センントラル靴」が請負い、販売はRENDOが行う。
そしてさらに購入者からのフィードバックを直接受け取り、次の製品に反映していく。まさに職人が連動してRENDOブランドが作り出されている様子が見てとれる。
RENDOの靴は、熟練の職人たちが作り出す高品質なアイテムを5万円以内から入手することができるため、コスパが良いことで評判が高い。価格を抑えられる理由は、RENDOが販売体制をしっかりと構築しているからである。このような点からも、使用するユーザーのことを考える姿勢が現れている。
職人やファンと連動して成長していくRENDOは、今後も期待値が高い国産ブランドとして要注目だ。
ショセ(Chausser)
ショセは、オーナー兼デザイナーの前田洋一氏によって2000年に立ち上げられたブランド。ブランド名である「ショセ(chausser)」は、フランス語で「履く」を意味する。
父親が靴職人だったこともあり、早くから靴業界に身をおいた前田氏の目指す靴作りのコンセプトは「長く愛着の持てる靴」。ハンドメイドへのこだわりから生み出されるショセの靴からは、温かさを感じることができる。
希少なナチュラルコードバンを使用した革靴は、ショセの人気商品の一つだ。使えば使うほど飴色に変化する経緯を存分に楽しむことができるため、革靴好きにはたまらない一品と言える。
ショセは現在、東京を拠点に世界7ヶ国でブランド展開をおこなっている。国産ブランドでありながら多くの国で認められているショセは、是非とも押さえておきたいブランドの一つだ。
パドローネ(PADRONE)
パドローネは、東京・足立区を拠点とする「ミウラ」が手がけるファクトリーブランド。同社は過去に、コムデギャルソンのOEM生産をおこなうなど、様々な有名ブランドの製作を請け負ってきた実績がある。パドローネの多くは、高い技術力が求められる「マッケイ製法」によって作られている。
そんなパドローネが人気を集めている最大の理由は、品質・デザイン性・コストパフォーマンスのバランスの良さである。熟練の職人が作り上げたアイテムを、30,000円前後で購入することができるため、幅広い年代から支持されている。
「上品で大人っぽいが、仕事用には見えない」
この絶妙なデザインが、どんなシーンでも違和感なく履くことができる使い勝手の良さに繋がっている。幅広いシーンで使えるパドローネは、一足は持っておきたいブランドだ。